WARHAMMERとの出逢い

 「別れよう」

彼女からのそのLINEは寝ぼけ眼だった私を叩き起すには十分だった。GWの予定も、USJに行く予定も、全ての予定が吹き飛んだ。私は出会い系アプリを使って、突然真っ白になったカレンダーをデートで埋めつくした。しかし、何度デートをしても気が合う女性はなかなか見つからなかった。私はヤケ酒をするような柄ではないのだが、このやるせなさを飲み込むためにはお酒が必要とその時ばかりは感じていた。仕事終わりの友人を呼び、ピザと会話をつまみに酒を飲んだ。私と友人はMtGというカードゲームでよく遊んでいたため、お店を出たあとは近くのカードショップに行くことにした。せっかくなので気分転換も兼ねて普段は行かないお店に向かった。閉店間際だったので客は私達だけだった。カードを見に行った私達だったが、ショーケースに飾られている全く別のものに惹き寄せられた。それはミニチュアと呼ぶには大きく、プラモデルと呼ぼうにも異質だった。私達のWARHAMMERとの出逢いだ。出会い系アプリを使っていたはずが、ミニチュアと出逢ったのだから不思議なものである。それらが1から塗装されたものであり、それらで戦うゲームがあると知った時は更に驚いた。

「明日、初心者用のティーチングイベントをやるよ」

店長と思われる男性が話しかけてくれた。私達は互いに予定を確認してその日を終えた。

 

 翌日、私はデートをしていた。それまでと違うことは携帯のブラウザがWARHAMMERで埋め尽くされていたことだった。「次、どうしよっか」という彼女の問いに対し、「ごめんね。この後用事があるからまた別の日に行こ!」と私は明るく応えた。用事という建前で胸の高まりを隠し、目指す先は例の店だった。お店の中は昨日と打って変わって、対戦をしている人と塗装をしている人でいっぱいだった。「面白いぞこれ!」友人は中学の頃と変わらない笑顔でそう言った。こいつはいつも妙なところでアクセルがかかる、なんて思いつつ私も対戦を見ていた。「やろうぜ。買おうぜ」こうなった以上、彼のアクセルは止まらない。やれやれと言わんばかりの表情で私はタウコマンダーを手に取り、彼に宣言をした。

「ゲームをするつもりは無い。一体だけなら買ってやる」

自分がミニチュアの軍隊を指揮することになるとも知らずに。